絵師の4つの成長段階について

多くの初心者はもちろん「楽しいから絵を描く」ものだし、それは描き手にとって基本的かつ一番重要なことです。
描くことを楽しむことができない人が、絵を描くことはできません。

でも、だからといってただ楽しんでいるだけでは、いつまでたっても他人から評価される絵は描けません。
初心者は「自分が描きたい物を絵にしている」と自分では思っていても、実際には描きたいと感じたもののうち、自分の表現力の範囲で表現できるものを描いているにすぎないからです。
それが必ずしも他人から見て理解できるとはかぎらないし、むしろ理解できないことの方が多いです。

ですから、他人から評価を得るためには、段階に応じて勉強する内容を徐々に変えていかなければいけません。
というわけで今回は、絵師としてプロに近づいていくための成長プロセスの話。

1. 自分が楽しく描く段階

どんな趣味でもそうですが、新しくスキルを覚え始めた人には「自分が楽しむ」という段階が必要です。
この段階がなかった人は、成長はいつか必ず打ち止めになります。
楽しむことは何より大事なことです。

この段階の人は、基礎練習をしっかりやることが大事です。
テクニックとか理論とか、そういう小難しいことは別にどうでもいいんで、基礎練習をとにかく楽しんでこなすこと。

世の中どんなスキルでも、基礎練習は基本的につらいものです。
だから楽しいと感じなければ、何年にもわたる大変な練習には耐えられないのです。

2. 人に分かるように描く段階

自分が楽しく描く段階をクリアして「人からの評価が欲しい」と思った人が最初にぶつかる壁が、「そもそも分かってもらえない」「理解してくれない」というジレンマです。
見せても「ふーん」で終わっちゃう。
ともすれば絵の趣味自体を否定されてしまう。

これを乗り越えるためには、「分かってもらうには、分かってもらえるように描かないといけない」というシンプルな事実に気づく必要があります。
普通の人は、描きたいものを描きたいように描いただけの絵は理解してくれないのです。
ですので、自分が何を創作しているのか「人にも分かるように描く」ことを覚え、最終的には自分の創作物が素晴らしい物であることをアピールし、理解してもらう。

そのためには気合いでがんばるだけではダメで、どう描けば分かってもらえるのかという知識の吸収も必要です。
自分が楽しければそれでよかった頃はただ描けばよかったのが、このあたりから「勉強しないと練習だけではどうにも無理」という状況になります。

なので「分かりやすい表現」「分かってもらえる表現」「正しい表現」、もしくはそもそも「分かってもらうとはどういうことか」といったことを学びます。
こういったことを学ぶには、教則本を読む、美術部に入ってる、美術教室やサークルに入る、美術系の学校に進学、といった方法が考えられます。

ただし、「教えてもらう」ことは人に聞くか本を読むかすればいいので簡単ですが、その教えてもらったことを「自分が理解する」のは全然別問題です。
美術知識はただ「知っている」だけでは全然意味がなく、その知識に基づいて手が動き、心が感じることも必要です。
ですから、覚えたことは逐一全て一度は実践してみる必要があります。

若い人の中には、「美大に入れば、自分が知りたいことを何でも的確に教えてもらえる」と思ってる人もいますが、違います。
美大は「美術にどっぷりハマれる場」を提供してくれるだけで、勉強自体は自分でやんないといけないのです。

大学生以上の絵の先輩がいる人は、先輩が絵の本を1度に1万円分とか爆買いしてるところを見たことがある人もいるかもしれません。
あれは、そういう勉強の仕方をしなければ、自分が学びたいことを効率的に学べないからです。

なお一般に、周囲に「美術に理解のある大人」がいる場合、この「人に分かるように描く」という段階には小学生のうちに至ります。
そういう人はうらやましいかぎりですが、そうでない人はこの段階に達するのが遅れる傾向があり、多くは高校・大学に入ってからということが多いです。

または自分で気づかないかぎり一生至れない人もいて、俺はそういうタイプでした。(一般に「絵のセンスがない人」とは、こういうタイプの人のことを指すことが多いです)
俺の場合は、今にして思えば「理解者」に相当する人は周りにいっぱいいたのですが、その人達が評価をくれない理由が「人から見て分かるように自分が描いてないから」ということに、子供のうちには気づくことができませんでした。

そういうケースもありますので、なぜか振り向いてもらえない系の人は、自分がそういうタイプでないかを考えた方がいいでしょう。

3. 人から喜ばれるように描く段階

自分が表現したいものを巧く表現できるようになった人が、次に抱える悩みが「見てはくれるんだけど『ああ、上手だねー』で終わっちゃう」というジレンマ。
もっと褒められたい、もっと称賛が欲しい、と思うのであれば、見る人を喜ばすように描かなければならず、それは単に分かってもらうこととは全然違う話です。

この段階に達するには、自分がまだその段階でないことに自分で気づくしかなく、言葉巧みに大人が教えてくれることはほとんどありません。
なので、いつこの段階に達するかは個人差が大きく、中学生くらいで達する子もいれば大人になってからという人もいて、どの年齢層が多いといったことも特にないように思います。
中には、思い込みがあまりにも激しすぎて、心を入れ替えないといつまでたってもにっちもさっちもいかない子もいます。
とりわけ「芸術は自己表現の手段であって、それ以外ではありえない」という信念を初心者のあまりに早い段階から持ってしまっている人は、この 3. の段階に至るのが遅れる傾向があります。

かつ、1. ~ 2. の段階では教則本を見れば何となく勉強がはかどっていたものが、このあたりから「該当する教則本がなかなか見つからない」という状況になってきます。
この段階の人向けの本も、本屋・古本屋に足しげく通えばたま~にあったりはしますが、だいたい表面的なことしか書いてないので、基本的にはプロから盗むしかありません。
(しいていえば「アイデア集」みたいな本がこの段階の人向け?)

4. 人の役に立つものを描く段階

分かりやすく、かつ人に見せれば褒められるレベルのものを定常的に生み出せるようになった人が、プロになる手前で(またはプロになってから)陥るのが、当然ながら「ここまでやったのに売れない」「値段をつけてみたら急に評価が下がった」というジレンマです。

自分が描いた絵に「値がつく」ためには、ただ喜んでもらえるだけではダメで、それが何かの役に立つものでなければいけないからです。
それができてないから売れないのです。

ただしここでいう「役に立つ」とは、別に会社で仕事に利用できるという意味ではありません
単に「心を癒す役に立つ」とか「持ってるだけで自慢する役に立つ」「人を喜ばすのに役立つ」または「ゲーム内のシナリオ効果として役立つ」といった全てのケースを含みます。
どんな役にでもいいし、ぶっちゃけ「爆発してない芸術なんて許せない」といった偏見とかあっても全っっ然問題ありません。
ですが、とにかく何の役にも立たない絵は売れないのです。

この段階に達するのはだいたい多くの人がプロになってからですが、社会人1年目でいきなりフリーランスとして売れてしまう人は、おおむねアマチュアのうちにこの段階に達した人です。
通常多くの人は、プロとしてやっていくうちに先輩から学び取ったり、または即売会などで売ったりしているうちに成るケースが多いです。

いうまでもなく、この段階以降の人向けの、教則本というものは存在しません。
俺自身さすがにここまで成った人間ではありませんが、将来的にもこの段階の人向けのコラムを書くつもりは毛頭ありません。
ここ以降は、基本的に「自分 vs 全世界」の領域です。


上記のうち 3. や 4. などは、まだ絵を描きはじめたばかりの初心者には、とても厳しいことを言っているように聞こえるかもしれません。
でもそれは、「そうなるためにはどうしたらいいのか想像がつかない」からそのように感じるだけです。
絵を長く続けていればちゃんと分かるようになります。

ただそうはいっても漫然と描いてるだけの人は、いつまでたっても「1.自分が楽しく描く段階」をクリアはできません。
自分を精神的に成長させるコツは貪欲にむさぼるようにです。

そのような気持ちがない場合は、あえて「1.」の段階で踏みとどまるのもいいし、そうすれば一生楽しんでいられます。
プロになるつもりがないなら、そういう人生も悪くはないでしょう。

ちなみに、(この部分は心理学の難しい話)

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