簡単なデザインのやり方

世の中の多くの同人絵師は二次創作をやることが多いので機会自体は少ないかもしれませんが、とはいえデザインに興味がない人はいないでしょう。
同人をやってる人の中にはプロを目指している人もいて、プロになったら特に新規のキャラクターデザインがやりたいという人も多いと思います。

とはいえ、プロ絵師の中にもデザインからコミコミお任せできる人と、デザインが決まってからでないと任せられない人とがいて、必ずしもみんながデザインに関われるわけではありません。
なんでかっていうと、日本の絵師は同人時代に二次創作しかやってないから。
オリジナルをやってない人に、オリジナルが任せられるわけがありません。

てなわけでデザインの基礎の話。

とはいえ、今回はタイトルで「簡単」とか釣ってすいませんって感じなんですが、正直デザインは簡単じゃないです。
当然です。
無から有を作り出す作業なんですから、そんなに簡単なわけがないんです。
なので今回は、本来デザインが出来てもおかしくないレベルに達している人にとっては簡単なやり方、という感じの話になります。

たとえばキャラクターデザインとかでも、教則本を見ても「女の子を描き、そこにパワードスーツを着せます」みたいなすっごい乱暴な説明の仕方をしてある本しかなくて、どういう考え方で何をすればいいのか書かれてないことも多いので、そのへんを補足するようなコラムです。
模写レベルが幼稚園児級の人でもプロ並みのデザインができる方法論とか、それはさすがに分かりません。

1. 前提条件

そこそこクオリティの高いデザインを行うには、最低でも以下のスキルをマスターしている必要があります。

1. クロッキー(速写)でもそこそこの細密描画ができること

デザインは、頭の中で考えたものがホットなうちに紙に描き起こさなければいけません。
人間は、雑念からアイデアを浮かべた際、1分くらいでそれを忘れてしまうといわれているので、忘れる前に描き起こさなければいけないからです。
その瞬間に考えたことを、あとから絵を見れば思い出せるくらいの細密さで、かつ忘れる前に素早く描けなければいけません。

2. アイデアの引き出しが多いこと

絵の中のある要素を見て、どうすればもっとカッコよく(かわいく)なるかのアイデアを、とにかくひたすら出し続けるのが基本的な手順になります。
ですのでアイデアの引き出しがそもそも少ない人できません。
何かギャグを言ってと振られても引き出しに「ためごろう」しかないとか、そういう状態ではダメです。
少なくとも自分自身の得意分野について、どんな「種」が来ても10個20個くらい軽くアイデアが出る、くらいの力が必要です。
(ただし、だからといってとっさに答えられる必要は特にありません。じっくり考えればいいアイデアが出るならじっくり考えればいいのです)

3. ベースとなるものに造詣があること

服のデザインをするなら被服の、自動車のデザインをするなら自動車の、ロボットのデザインをするならロボットの、それぞれのジャンルに対して相応の知識がなければいけません。
これは、そのジャンルに詳しいかどうかではなく、愛があるかどうかの問題です。
 
どんなに口先だけで好きだと言ってても、自動車のことを何も知らない人が自動車のデザインはできません。
逆にそのジャンルにどんなに詳しくても、老害からはイノベーションは生まれません。
ことデザインにおいては、この世で美しいものはただのみなのです。

もちろん、上記3つが完璧でないと挑戦する価値すらない、ということではありません。
現時点で能力がないのなら、自分を鍛え上げればいいだけのことです。

特にデザインは、素人さん達から「生まれつきのセンスがないと無理」などとうそぶかれがちなジャンルです。
そのため同人絵師としてある程度のレベルのある人でも、意外と「自分には無理」と思い込んでしまっていることも多いです。

ですが同人制作であれば、別にプロ並みのデザイン力がある必要は特にないのです。
下手でも不恰好でも、練習だったら問題ないのですから、どんどん挑戦しましょう。

とはいえ、勝てない勝負はしない系の人は、まぁ、好きにすればいいと思いますが。
そんな人はそもそもプロ絵師にはなれませんけどね。

2. ベースを用意

当たり前ですが、デザインをするなら「何を」デザインするのか決めます。
ただし細部があいまいなものはダメです。
頭の中にそもそもイメージがないものをベースに使うと、どこをどう描いたらいいか分からなくなります。

たとえば主人公が普段着る服であれば、ただ「服」ではなく、「制服」「Tシャツ+ジーンズ」「着物」「背広」など、一般的なイメージがパッと湧くものをベースにした方がいいです。
それか、ベースにするものの資料をちゃんと用意しておくか。

デザインは基本的に頭の中での作業になるので、イメージが存在しないものをデザインすることはできません。
特に描き慣れたものほど何となくで描いてしまう、という人は要注意です。

なお、ベースに用いる対象については、当然のことながら著作権のあるものを使った方がクオリティは高くなります
いつまでたってもデザイン業界にパクリがなくならないのはそのためです。

ですが実際にコミケに出すなどの売り物をデザインするときには、著作権ないものをベースに使いましょう。
これはデザイナーとしてのプライドの問題です。

3. モチーフを用意

で、キャラデザには、何がなくともとりあえずモチーフが必要です。
モチーフがなくては何も始まりません。
別に挑戦するならモチーフなしでやってもかまいませんが、最終的なクオリティは必ず低くなります。
モチーフは必ず用意しましょう。

具体的に何を使うかは、ぶっちゃけ何でもいいのですけど、「ベースとは全く関係ないもの」で、かつ「それを実際に使う人と関係する」ものがいいでしょう。
たとえば主人公の普段使いの服であれば、洋服とは全く無関係なもののうち、主人公が好きなもの(そういう設定のもの)などを用いるといいです。
主人公がかわいい女の子で、ケーキ作りが趣味という設定があるなら、「ケーキ」とか「調理道具」なんかがモチーフとして使えます。
(ベースと違うところは、モチーフは「概念」や「不定形のもの」など、はっきりイメージできないものであっても構わない点です。「規律」や「炎」などもモチーフに使えます)

ただし選び方によっては、ベースとモチーフが巧く結びつかないような、そういう感じがすることもあります。
そんなときは、モチーフを変えてみたり、2つ目のモチーフを加えてみるのも手です。
要はアイデアを出すためのきっかけとして使えればいいので、別に難しく考える必要はないのです。

なお、なぜモチーフが絶対に必要なのかというと、(この部分は認知心理学の難しい話)

4. デザインするものをパーツに分ける

で、具体的なデザインに入るときは、まずは「ベースとモチーフの中間の形」を基本に、ざっくりと大雑把に描き起こします。
何をもって「中間」とするのかの判断が腕の見せ所です。
モチーフ通りの着ぐるみみたいなものを描いてもいいし、ベースデザインのダメなところを徹底的にけなしてそこを修正するんでもいいです。

で、次にパーツをざっくりといくつかの部位に分解します。
小さなブローチなどであれば必要ありませんが、洋服や工業製品のような大きなものは、全体を1つの塊と捉えると巧くデザインできないことも多いからです。
特に「二足歩行ロボット」や「バトルスーツ」など、実在しないものをデザインするとき、その傾向は高くなります。

それから、複数のパーツに分けてそれぞれ個別にデザインを行います。
頭の中で自然に分かれる場合は一括でやってしまって構いませんが、どこから取りかかればいいか分からない場合は分解します。
服の場合は「袖」「手」「襟」「胴体」「下半身」「靴」など、自動車であれば「グリル」「ライト」「ボンネット」「フェンダー」「キャビンフレーム」「ドア」「リア」「ウィング」みたいな感じですかね。

適当に分解してそれぞれ個別にデザインし、あとでくっつけるのです。
ブレインストーミングで色んなアイデアを出し、様々な試作をします。
クロッキー帳にとにかく描き殴り続けます。

モチーフを統一させておけば、あとで組み合わせたときにおかしくなるというリスクはさほどありません。
とりあえず今は思い切っていろんなことをやりましょう。
想像するより妄想する」という気持ちでいた方がアイデアも出しやすいです。

この工程はとにかく「考える」しかなく、教則本通りにやれば完成する手順といったものはありません。
今までの自分自身の記憶を総動員して、一番美しいと思うデザインを考え出してください。

で、全てのパーツが完成したら一度くっつけてみてバランスを見ます。
別々にデザインしたものをくっつける作業をするときは、なかなかウキウキする楽しい瞬間です。
くっつけた結果バランスが悪いようだったら調整を繰り返します。


通常多くの人は数をこなせば自然にデザインがテンプレート化され、似たものを考える際により素早くデザインできるようになります。

当コラムの “1. 前提条件” を満たすレベルの人であれば、「女子高生を描け」と言われた際、いちいち参考写真をどこからか引っ張ってくることもなく、何となく自然に「これは中学生でも大学生でもなく女子高生だ」と分かるような絵が描けるはずです。
これは、数多くのイラストを描き続けたことで、女子高生のテンプレートが頭の中に出来上がっているからです。

同じように、デザインもある程度のテンプレートを頭の中に作っておくことで、通り一遍の簡単なデザインであれば深く考えずに自然にできるようになるかもしれません。

ただし、とりわけデザインは完成品の「個性」が重要なので、あまりテンプレートに頼りすぎるのも問題です。
テンプレートも頼りすぎればただの「思い込み」です。

なので、頭の中にテンプレートが出来上がっていると感じたら、それをただ純粋に喜ぶだけではなく、テンプレートから外れたこともたまにはしてみた方がいいでしょう。
その方が仕事の幅も広がるはずです。

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